経済学における時間選好とは、将来の満足よりも現在の満足を重視する人間固有の傾向を指す。人は将来、手に入る同じ財やサービスよりも、現在手に入る財やサービスの方に価値を感じる。これは意思決定、特に消費と投資の領域で重要な役割を果たす概念である。これは、将来のリスクや不確実性を避けたい心理が働くからだ。よくある例で言えば、今日100円を受け取るか、1年後に150円受け取るかという選択を迫られた場合、ほとんどの人は今日100円受け取る方を選ぶだろう。
この原則は経済学と金融の基本概念であり、金利、投資判断、消費パターンに影響を与える。人々や社会は様々な程度の時間選好を示し、貯蓄、支出、将来の計画に関する選択に影響を与える。時間選好度が高い人と低い人がいる。
高時間選好
時間選好が高い人は、将来の満足よりも今現在の満足を優先する。時間選好性の高い人は、持っている資源をすぐに消費する傾向があり、将来の結果をあまり考慮せずに、即座の快楽にお金と資源を費やす。この種の人々は、長期的な貯蓄や投資に苦労する可能性があり、将来や老後、その他の大きな目標について計画を立てることが困難な場合がある。この種の人々は、衝動的な行動や、短期的な利益や目先の報酬を好む傾向が多い。
時間選好性の高い社会やグループは、長期的な計画や経済的安定、持続可能な資源管理が欠けていることが多い。また、そのような社会では、様々な困難な局面が発生する可能性がある。貯蓄や投資、将来のための教育を奨励することは、時間選好の高さに関連する潜在的なマイナス面を解決する上で非常に重要であると考えられている。
低時間選好
一方、時間選好性が低い人々は、遅延された満足を優先し、より実質的な将来の利益のためなら目先の報酬を見送ることを厭わない特徴を持っている。時間選好が低い人は、経済や金融、そして全体的な幸福という観点から、長期的な持続可能性のために貯蓄や投資、計画を立てる傾向がある。この種の人々は将来的な影響を考慮した意思決定をする傾向が強く、一般的に遅延した報酬を処理する能力が高いと考えられている。
時間選好の低い社会やグループは、経済的安定、持続可能な資源管理、将来のための長期的な計画に重点を置く。貯蓄や責任ある投資、将来世代への教育を奨励するような政策は、時間選好の低い社会でより共感を得られる可能性が高い。
時間選好を理解することは、経済分析や政策立案において極めて重要である。なぜなら、時間選好は個人や社会の意思決定プロセスに対する洞察を提供し、長期にわたって持続可能な成長と幸福を促進する戦略の形成に役立つからである。将来の不確実性とリスク、個人の道徳観、消費と生存の必要性から、合理的な人間は自然に現在の幸福を好むようになる。人々が遅延された満足を好む社会では、通常、長期的にはより多くの技術的進歩がある。そのような社会では、紛争が資本財の円滑な生産と経済活動の遂行を妨げることを人々が認識しているため、平和と繁栄がより多く存在すると考えられている。
1960年にミッシェルとエッベ・エッベセンが行ったスタンフォードのマシュマロ実験が有名だが、この実験では、満足を遅らせる能力の高い子どもほど、数十年後の将来の結果が良い方向に向かっていると示された。基本的に、時間選好性の低い子どもは学業成績が良く、依存症や体重オーバーや肥満の問題もなかったと実験結果で明らかなった。
時間選好とフィアット
フィアットというのは法定通貨ことを示す。経済全体の観点から時間選好について考えてみよう。政治家や指導者は、自分たちの有能さを証明するため、あるいは示すために、即座に結果を出そうとする。しかし、実際に起きているのは、長期的には複合的な破壊を生み出すような政策の作り方なのだ。近年、世界中の政府が自国通貨を数え切れないほど刷っているのは書くまでもないと思う。その結果、世界各国の債務が増加しているのも当然のことだ。中央銀行による恣意的な通貨の増刷により、法定通貨は時間の経過とともに購買力を失っている。通貨の価値の保存する性質は、もはや本来の機能を果たしていないのだ。通貨の特性については、過去に書いた価値交換を一読ください。このような状況を知れば、理性的な国民がお金を貯めるはずがなく、以前よりも多くの負債を積み重ねるようになるだろう。その結果、生産性が低下し、誰にとってもより良い未来にはならない。社会はこのように悪化していくだろう。
時間選好とビットコイン
低い時間選好、貯蓄、資本蓄積、生産を奨励する通貨制度は、社会をポジティブな方向に動かし、影響を与える社会的、技術的進歩を生み出すと考えられる。ビットコインは、このような法定通貨システムの欠陥を是正する。ビットコインは、法定通貨を排除し、需要と供給が効果的に機能するように自然な市場を作り出すことによって、それを実現することができる。ビットコインには、誰もコントロールできない発行予定時間があり、供給量は2100万枚に制限されている。こうしてビットコインは政治の影響力を弱め、各国の経済は停滞から解放される。ビットコインは文明をさらに進歩させる力を持っている。もちろん、それには時間がかかるだろう。なぜなら、富裕層や官僚、銀行家たちは、すでにCBDCに取り組んでいるように、ビットコインが機能することを許さないように最善を尽くすだろう。しかし、実際のところ、誰もビットコインの動きを止めることは不可欠なのだ。「Bitcoin: The Hard Money you can’t F*** with」という本を強くお勧めする。発展途上国の国民、付加価値を生む商品やサービスの生産者は、必然的にビットコインが提供する公平なシステムに引き寄せられるだろう。その結果、ジミー・ソングの『Fiat Ruins Everything（フィアットはすべてを破壊する）』で書いてくれているように、ゾンビは共食いするためだけに残されることになるだろう。
最後までお読みいただきありがとうございます。それでは、また次回。